お金や経済格差がテーマとなっている小説をまとめます。読む楽しみを損なうようなネタバレはありません。
親しい友達におすすめするテンションで好き勝手言っていますので、
個人の感想として参考にしていただけると幸いです。
本選びの基準
うにの本選びの基準は以下です。
Kindle Unlimitedを契約しているので、その対象本から選ぶことも多いです。
小説は入れ替わりが激しいので、読みたい本が対象であればすかさず読むのがポイントです!
お金と人の幸福について、色んな角度から考えられる小説を集めました!
お金、経済格差をテーマにした小説5選
「火車」宮部みゆき
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。(新潮社より)
火の車というと借金の話かな、と予想していたら、カードローン地獄を題材にした小説でした。燃え盛る車を背負って坂道を転がり落ちる女性の行く末は? 読み物としてのストーリーの吸引力はさながら、クレジットカードの登場がもたらした生活の変化が克明に描かれており勉強になります。序盤は「借金なんだから簡単に手を出しちゃいけないでしょ」というスタンスで読んでいた部分があったのですが、作中でそれを見透かすかのような弁護士さんの言葉が出てきてウッ…と考えさせられました。カードローンがどういうものなのか、この歳だから分かりますが、もっと若い時に「やめとけ」と言ってくれる大人がいなかったら自分も同じことになっていたかも。カード使用額をアプリで確認したときに出る「今月の支払いを減らしませんか?」を見ると、この作品を思い出して暗澹たる気持ちになります。
社会について考えさせられる度:★★★★★
読了後のしみじみ度:★★★★☆
また読み返したい度:★★★★☆
「三千円の使いかた」原田ひ香
就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?
知識が深まり、絶対「元」もとれちゃう「節約」家族小説!(出版書誌データベースより)
「人は三千円の使い方で人生が決まる」。話題作なので手に取ってみましたが、納得と共感のオンパレードでとても良かったです。御厨家の女性たちの世代ごと、性格ごとの「お金の悩み」「お金に対する考え方」が等身大に感じられて、自分が40歳、60歳、と歳を重ねていった時のことを想像しながら読めました。お金の話って身内が相手でもあんまりしないですが、お金の使い方ってその人の価値観がもろに出るんですね。お金というひとつのテーマを介して登場人物を描くことで、各々の個性がより際立つのが面白くて新鮮でした。婚約者の家族の話~物語の結末は個人的には若干しっくりこなかった(それでいいのか?と思ってしまった)ですが、全編通して物語を楽しみつつお金について考えられる良い作品です。
登場人物に共感できる度:★★★★★
読了後の満足度:★★★★☆
また読み返したい度:★★★★☆
「あのこは貴族」山内マリコ
東京生まれの華子は、箱入り娘として何不自由なく育てられたが20代後半で恋人に振られ、焦ってお見合いを重ねた末にハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。一方、東京で働く美紀は地方生まれの上京組。猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退し、一時は夜の世界も経験した。腐れ縁の「幸一郎」とのダラダラした関係に悩み中。結婚をめぐる女たちの葛藤と解放を描く、渾身の長編小説。(出版書誌データベースより)
慶応内部進学のボンボン男性と、それを取り巻く境遇違いの二人の女性を描いた作品です。箱入りお嬢様の華子と上京組苦労人の美紀。「ドロドロ、格差階級、修羅場…」みたいな展開が描かれそうなシチュエーションですが、終始すらりと綺麗な文章で異文化交流が描かれるところに好感をもちました。華子目線では「生まれ・育ち・財力」を兼ね備えた人々の閉鎖的なコミュニティ内で権力が脈々と受け継がれていく様子が描かれますが、今の日本の権力者の面々が思い浮かんでなんとも言えない気持ちになったり…。とはいえ華子と美紀、境遇の違う2人が、おのおのの苦悩をを自分の力で断ち切っていくストーリーは繊細かつ痛快。前向きなパワーがほしい大人女性におすすめの一冊です。
一歩踏み出したくなる度:★★★★★
読了後の満足度:★★★★★
また読み返したい度:★★★★☆
「インシテミル」米澤穂信
アルバイト情報誌に掲載されていた仕事は「ある人文科学的実験の被験者」になれば、時給1120百円…つまり11万2千円がもらえるというもの。これは誤植か? そんな仕事が実在するのか? 破格の条件につられて応募し、選ばれたのは12人の男女。とある地下施設に閉じ込められた彼らは、<実験>の内容を知り驚愕する。それは、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった──。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場! 映画化原作。(出版書誌データベースより)
最近読んでいた「硝子の塔の殺人」(知念実希人) の作中で、この作品が言及されていたので手に取ってみました。デスゲームものは「ただ残酷に人の希望絶望や蹴落とし合いが描かれて終わり」のパターンを危惧して敬遠しがちなのですが、これは面白かった!誰がどんな思惑をもってどんな嘘をついているのか?という推理の自由度が高く、真相が気になって一気に読めました。序盤と中盤にある「一本滞っておりますの」の意味が最後の最後に回収されるところ、芸術点の高さを感じます。主人公の性格が作中でどんどん変わっていく(明らかになっていく?)のについていけず所々「!?」となりましたが、あまり感情移入できてもしんどい話なので、これくらいでちょうどいいのかも。
ドキドキ&ヒリヒリする度:★★★★★
読了後の満足度:★★★★☆
また読み返したい度:★★★☆☆
「華麗なる一族」山崎豊子
業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。不気味で巨大な権力機構〈銀行〉を徹底的に取材した力作。(新潮社より)
一番好きな小説は何か?と聞かれた時に頭に浮かぶ作品の1つです。舞台は高度経済成長期の関西、阪神銀行のオーナー頭取一家に隠された秘密と、富と権力をめぐる愛憎劇。とにかくもう密度と展開の緻密さが凄まじいです。ライバル銀行、融資先の企業、官僚、政治家、そして血族に男女、パワーバランスと人の心の動きが複雑に絡まり合って大きな流れが形成される様子が圧巻!初めて読んだ頃(高校生のころだったかな?)は特殊鋼にかける鉄平の熱意や二子の意志の強さ、華やかな世界観に惹かれましたが、支店の行員が預金ノルマ達成に向けて奔走する場面や銀行忍者部隊が暗躍する場面など、歳をとって読み返すと今まで読み流していた描写が次々とぶっ刺さって面白いです。文庫裏のあらすじはネタバレを含むので目を伏せて買うことをおすすめします!
人間ドラマの濃密度:★★★★★
読了後の満足度:★★★★★
また読み返したい度:★★★★★
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