「ルッキズム」や「美容整形」をテーマにしたおすすめ小説をまとめます。読む楽しみを損なうようなネタバレはありません。
親しい友達におすすめするテンションで好き勝手言っていますので、
個人の感想として参考にしていただけると幸いです。
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本選びの基準
うにの本選びの基準は以下です。
Kindle Unlimitedを契約しているので、その対象本から選ぶことも多いです。
小説は入れ替わりが激しいので、読みたい本が対象であればすかさず読むのがポイントです!
いろんな美女が出てきますよ~!
ルッキズム、美容整形がテーマのおすすめ小説5選
「カケラ」湊かなえ
美容外科医の橘久乃は幼なじみの志保から「やせたい」という相談を受ける。カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生・横網八重子の思い出と、その娘の有羽が自殺したという情報だった。有羽は高校二年から徐々に学校に行かなくなり、卒業後、ドーナツがばらまかれた部屋で亡くなっているのが見つかったという。母が揚げるドーナツが大好物で、それが激太りの原因とも言われていた。もともと明るく運動神経もよかったというその少女は、なぜ死を選んだのか? 「美容整形」をテーマに、外見にまつわる固定観念や、人の幸せのありかを見つめる、心理ミステリー長編。 (出版書誌データベースより)
湊かなえさんが美容整形について書かれた小説ということで文庫化を楽しみにしていました。章がそれぞれ関係者の独白になっていて、それぞれの事情や主観から見た情報を繋ぎ合わせながらひとつの自殺事件の全貌を紐解いていく構成です。この関係者たちが、好き勝手なことをしゃべるしゃべる(笑)事件の話と事件に関係ない話が半々くらいで、一気に読まないと何を読まされているのかわからなくなります。めちゃくちゃ喋るご近所さんの話に付き合わされてる感じ。人々の価値観の押し付けやエゴの描写が生々しいだけに、ときにそれらが連鎖して誰かを死に至らしめるというストーリーには重みを感じました。物語の構成上、一人称視点である橘久乃の人間性が掴みづらく、ラストも真相がわかりやすく解明される感じではないので、ミステリーとしての読後感はあまりスッキリしない一冊です。
人物描写の解像度:★★★★★
読了後の満足度:★☆☆☆☆
また読み返したい度:★★★☆☆
「モンスター」百田尚樹
誰もが魅了される絶世の美女・未帆。しかし彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。莫大な金額をかけて徹底的に整形し、変身を遂げたのは何のためか。『永遠の0』の著者、最大の問題作!(出版書誌データベースより)
こちらも同じ「美容整形」をテーマにした話ですが、毛色が全く違って興味深いです。著者の自認が男性か女性かによってだいぶ描き方に差が出るテーマのひとつなんじゃないかな?と感じました(一概には言えませんが…)。こちらは簡単に言えば「整形によって絶世の美しさを手に入れた女性」が「外見で態度を変える滑稽な男たち」に復讐し、あるひとつの目的を成し遂げるまでの話。劇的な下剋上の展開にドキドキします。極端なキャラクター設定には最後まで感情移入できず、「美」のモチベーションを「男」にわかりやすく設定している点に物足りなさを感じてしまいましたが、変わっていく外見と変わらないままの内面がどんどん乖離していく不穏さに目が離せず集中して読めました。最後のオチのつけかたはさすがの百田尚樹さんという感じですね。
スルスル読める度:★★★★★
読了後の満足度:★★★☆☆
また読み返したい度:★★☆☆☆
「逆転美人」藤崎翔
「私は報道されている通り、美人に該当する人間です。でもそれが私の人生に不幸を招き続けているのです」飛び抜けた美人であるせいで不幸ばかりの人生を歩むシングルマザーの香織(仮名)。娘の学校の教師に襲われた事件が報道されたのを機に、手記『逆転美人』を出版したのだが、それは社会を震撼させる大事件の幕開けだった――。果たして『逆転美人』の本当の意味とは!? ミステリー史に残る伝説級超絶トリックに驚愕せよ!!(出版書誌データベースより)
こちらは「ルッキズム」をテーマにした本。書店でいつも良いところに平積みされているので、気になって読んでみました。「前代未聞の仕掛け!」「紙で読んで!」という紹介文から、なんらか物理的なトリックがあるんだろうな~とは思っていたのですが、自分では全然気づけなかった!思いついてもこれを無理なく実現させた藤崎翔さんがすごいと思いました。メタ的な仕掛けと物語の設定がきちんと嚙み合っているのが美しいです。「美人に生まれたことによる苦労」が綿々と綴られる手記パートは話がどこに向かっているのかがよく分からず、いまいち集中できなかったのですが、最後まで読んでから「最初からもう少し注意深く読めばよかった!」と後悔も。まだ読んでいない人に勧めたくなる1冊です。
仕掛けがすごい度:★★★★★
読了後の満足度:★★★★☆
また読み返したい度:★☆☆☆☆
「テティスの逆鱗」唯川恵
華やかな美貌で売る女優、出産前の身体に戻りたい主婦、完璧な男との結婚をねらうキャバ嬢、そして、独自の美を求め続ける資産家令嬢。美容整形に通い詰める4人は、どんどんエスカレートし、やがて「禁断の領域」にまで達する――。終わりなき欲望を解き放った女たちが踏み込んだ、美容整形という天国と地獄。その戦慄の風景、女の心模様に震撼する、美と恐怖の異色作!(出版書誌データベースより)
有名美容整形外科に通い詰める、美容整形依存の4人の女性のお話です。異常性や極端さは上記の「モンスター」に近い部分がありつつ、より女性の情念というか、「美しくあることそのものへの執着」に生々しさを感じる一冊でした。特に印象的だったのは資産家令嬢の涼香。人からの評価ではなく自分の思う美しさを求める姿に気高さすら感じる反面、その価値観が形成されるに至った背景を考えて重たいものが残ります。全編を通して「なるほどこういう感じで美容整形にハマっていくのか…こわいなあ…」と思いつつ野次馬根性で読んでいたのですが、結末の展開はパズルのピースが嵌ったかのような整い方でゾクゾクしてしまいました。もう少しキラキラした話かと思って手に取ったのですが、これはサイコホラー小説ですね。読み物として完成度が高くとても面白かったです。
登場人物がぶっ飛んでる度:★★★★☆
読了後のゾッとする度:★★★★★
また読み返したい度:★★★★☆
「夜の向こうの蛹たち」近藤史恵
小説家の織部妙は順調にキャリアを積む一方、どこか退屈さも感じていた。そんなある日、“美人作家”として話題の新人、橋本さなぎの処女作に衝撃を受ける。しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の完璧すぎる受け答えに、なぜか幻滅してしまう。織部の興味を惹いたのは、橋本の秘書である初芝祐という女性だった。初芝への気持ちを持て余す織部は、やがて「橋本さなぎ」の存在に違和感を抱くようになる。その小さな疑惑は開けてはならない、女同士の満たされぬ欲望の渦への入り口だった……。「第13回エキナカ書店大賞」受賞作家の最新作。(出版書誌データベースより)
こちらは怖くない話です。物語の背景はわりと序盤に推測できてしまったものの、つまらなさを感じるわけでもなく、掴みどころがない不思議な読後感でした。小説家2人と秘書1人の3人の女性が織りなす人間関係を描いた作品なのですが、生まれ持った外見から形成されている登場人物たちの価値観の違いが対照的です。堅実にキャリアを重ねている妙のだらしなさ、赤ちゃんのような印象の初芝が抱える屈折、完璧なまでの気配りを見せるさなぎの狡猾さなど、オブラートに包まれたやりとりの中でハッと対称性が見える描写がちりばめられていて面白かったです。蛹から羽化したふたりと、繭から出られないひとり。ラストもきれいでした。
登場人物の魅力度:★★★☆☆
読了後の考えさせられる度:★★★★☆
また読み返したい度:★★★☆☆
よろしければ読んでみてくださいね♪