【読書記録】おすすめディストピア小説5選。桐野夏生「日没」ほか

【読書記録】おすすめディストピア小説5選。桐野夏生「日没」ほか 読書記録

おすすめのディストピア小説をまとめます。読む楽しみを損なうようなネタバレはありません。

親しい友達におすすめするテンションで好き勝手言っていますので、
個人の感想として参考にしていただけると幸いです。

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本選びの基準

うにの本選びの基準は以下です。

・本屋さんで目立つところに置いてある本
・好きな作家さんの本
・テーマに興味がある本
・表紙やタイトルが気になった本
・文庫化されている本

Kindle Unlimitedを契約しているので、その対象本から選ぶことも多いです。
小説は入れ替わりが激しいので、読みたい本が対象であればすかさず読むのがポイントです!

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おすすめディストピア小説5選

「日没」桐野夏生

小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は―。足下に拡がるディストピアを描き日本を震撼させた衝撃作、待望の文庫化!(紀伊國屋書店より)

本屋さんで不気味なカバーに惹かれ、読んでみました。近未来の日本を舞台に、小説家が自由な表現を規制される社会を描くディストピア小説です。カバーの印象を裏切らず閉塞感溢れるどんよりした雰囲気で、面白いのですが三半規管がおかしくなりそうでした。主人公、マッツ夢井の人間らしい(俗っぽい)感情の機微の描写がみごとで、「マッツ!そこはもうちょっと粘れ!」という場面と「マッツ!やめとけ!」という場面が交互にきて翻弄されます。物語終盤、「ふぅ、やっと読み終わる。怖い話だったな」と気を抜いていたらラスト数ページで鳥肌がすごかった。表現の自由とは何か?ということを考えさせられる一冊です。

考えさせられる度:★★★★★
読了後の衝撃度:★★★★★
また読み返したい度:★★★☆☆

「一九八四年」ジョージ・オーウェル

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。(紀伊國屋書店より)

監視社会や思考の統制方法の描写が生々しい、ディストピア小説の大定番です。今までKindle Unlimitedで読んだ本の中で一番衝撃を受けた本で、身体的なバイオレンス描写ももちろんこわいのですが、思想を捻じ曲げる系のバイオレンス描写が根っこにあるのめちゃくちゃこわい。出てくる用語ひとつひとつの設定が細かくて、フィクションとは思えぬリアルさもさらにこわい。初めて読んだときはその後しばらく夢見が悪かったくらいです…。言語が思考を定義するという考え方は、作中のように極端ではないにしても現代社会に確かに通ずるものですよね。なんでも「やばい」「すごい」で片付けないように言葉を大切にしたいなと思いました。

考えさせられる度:★★★★★
読了後のゾゾゾ…度:★★★★★
また読み返したい度:★★★★☆

「密やかな結晶」小川洋子

その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。
鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。
有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。(紀伊國屋書店より)

こちらも「THE ディストピア小説」ですが、小川洋子さんらしい美しくて繊細なトーンが魅力的な一冊です。とある島で、物とそれにまつわる記憶がひとつずつ消滅していくさまが描かれます。主人公が書く小説の内容と、主人公をとりまく環境、それを読んでいる自分をとりまく環境、と複数のレイヤーが微妙にリンクしているようで、不思議な立体感を覚えながら読み進めました。「密やかな結晶」というタイトルも奥行きがあっていいですよね。心の中にある物語は誰にも奪えない、という意味での言葉なのか、隠し部屋に匿ったR氏や母が残した消滅品をさしているのか(消滅品の中でもエメラルドは象徴的でした)。静かで透明感のある雰囲気のディストピア小説をお求めの方におすすめです。

考えさせられる度:★★★★★
読了後のしみじみ度:★★★★★
また読み返したい度:★★★☆☆

「殺人出産」村田沙耶香

今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。(紀伊國屋書店より)

個人的に、著書を家の本棚に並べたくない作家第一位の村田沙耶香さん。奇想天外な設定と読みやすい文体につられて、ダメージを食らうのを分かりつつも読んでしまいます。こちらも例にもれず大変クレイジーなお話でした。。表題作の「殺人出産」は、10人産むと1人殺せるという驚異のシステムで人口が保たれている、100年後の日本が舞台の物語。何があったらこの発想が出てくるんだろうと感動します。自分が思う常識が常識じゃなくなった世界を目の前に、倫理観や死生観についてあらためて考えさせられる一冊でした。

考えさせられる度:★★★★★
読了後のなんとも言えない度:★★★★★
また読み返したい度:★☆☆☆☆

「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。(紀伊國屋書店より)

小説を好きになるきっかけになったお話です。「介護人」「提供」…はっきりと説明されないまま散りばめられた不穏な描写に不安を掻き立てられる作品でありながら、登場人物たちの他愛無いやりとりや温度感に不思議な心地よさを感じる作品でもあります。物語の行き着く先は最初からなんとなく想像できて、それがだんだんと確信に近づいていくのが苦しい。文体は終始淡々としていて、時系列が行き来する構成もけして「読みやすい」とは言えないのですが、おそろしく感情が揺さぶられる一冊です。初回はぜひネタバレなしで読んでほしい!

考えさせられる度:★★★★★
読了後の放心度:★★★★★
また読み返したい度:★★★★★

うに
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