【読書記録】「いじめ」をテーマにした小説。林真理子「8050」ほか

【読書記録】「いじめ」をテーマにした小説。林真理子「8050」ほか 読書記録

「いじめ」がテーマとなっている小説をまとめます。物語の核心に迫るようなネタバレはありません。

親しい友達におすすめするテンションで好き勝手言っていますので、
個人の感想として参考にしていただけると幸いです。

うに
うに

ずーん…と心に圧し掛かる作品が多めです。。

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いじめをテーマにした小説5選

「8050」林真理子

このままでは、我が子を手にかけ、自分も死ぬしかない。歯科医の大澤正樹とその妻、節子は悩んでいた。長男の翔太は中学で不登校に、以後七年間引きこもり続けている。一方、一流企業に勤める姉の由依は、弟のせいで結婚できないと両親に訴える。ついに息子と向き合う決心をした正樹が知った恐ろしい真実とは―。引きこもり、家庭内暴力、不登校、いじめ…現代日本を抉る社会派エンタメ長編。(紀伊國屋書店より)

「80代の親と50代の子」の引きこもり問題を背景にした作品。学生世代にフォーカスした作品が多い中、少年期のいじめがその後の人生に影を落とす様子を描いている点が新鮮に感じられました。いじめが単なる一時的な出来事ではなく、人生全体に影響する怖さを痛感します。重いテーマを真正面から扱っているものの悲壮感でいっぱいという感じはなく、読みやすい文体なので先が気になって一気に読めます。再出発の一歩を踏み出す勇気を貰える一冊です。

考えさせられる度:★★★★☆
読了後の満足度:★★★★☆
また読み返したい度:★★★☆☆

「ヘヴン」川上未映子

“わたしたちは仲間です”―十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える“僕”は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞ダブル受賞。(紀伊國屋書店より)

14歳、眼の病を持つ「僕」と、同級生のコジマがクラスで壮絶ないじめにさらされる物語です。二人の間に生まれる友情は支えであるはずなのに、同時に苦しみを深めるものでもある、というのが苦しい…。なぜ人は人を傷つけるのか?という根源的な問いが胸に迫ります。川上未映子さんの作品は透明感のあるものが多くて好きなのですが、この作品においてはその文体がむしろ残酷さを鮮明に浮かび上がらせているような感じがします。読後には重苦しさが残りつつ、人間の尊厳について深く考えさせられる一冊です。

考えさせられる度:★★★★★
読了後の爽快度:★☆☆☆☆
また読み返したい度:★★☆☆☆

「エミリー」嶽本野ばら

“この残酷な世界に生み落とされたのは、きっと貴方に出逢う為だったのですよね”。少年と少女の困難で美しい生と性を描いて三島由紀夫賞候補となった表題作はじめ、アートとファッションへの美意識を核に咆哮する三つの愛の物語は、「うっとり読んでいると、破壊力抜群の言葉になぎ倒される」(解説より)。孤高の乙女魂と、永遠の思春期を抱くすべての人に放つ、珠玉の恋愛小説集。(紀伊國屋書店より)

恋愛短編集、表題作の「エミリー」が印象的で記憶に残っています。好きなのか嫌いなのか分からないけど心に引っかかる作品という感じ。Emily Temple Cuteのポップで可愛らしいファッション描写がすごく素敵で、そこに幼少期のトラウマや陰湿ないじめ描写が乗っかってくる対比が強烈です。主人公のファッションやブランドに対する認識が単なる装飾目的ではなく「信仰」に近くて、ひたむきさが眩しい反面、危うくて辛いものがあります。人は選びそうですが刺さる人には刺さるタイプの作品です。

独特の世界観に引き込まれる度:★★★★★
読了後の満足度:★★★☆☆
また読み返したい度:★★☆☆☆

「ナイフ」重松清

「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いものなのか!ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子供を守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その闘いは、決して甘くはないけれど。坪田譲治文学賞受賞作。(紀伊國屋書店より)

重松清さんの作品の中でも屈指の「読むのがつらかった一冊」。いじめを正面から描いた短編集で、加害者・被害者・傍観者それぞれの視点が丁寧に表現されています。子供の残酷さに対してあまりに解像度が高い。大人では見落としがちな“心の小さな揺れ”が浮き彫りになります。古い小説なので時代が違うなと思う部分はあるのですが、それ以上に今も昔も変わらない部分に暗澹とした気持ちになります。親世代・教育関係者にもぜひ読んでほしい一冊です。

考えさせられる度:★★★★★
読了後の爽快度:★★☆☆☆
また読み返したい度:★★☆☆☆

「あたしたち、海へ」井上荒野

有夢と瑤子と海は幼馴染みの仲良し三人組。中学の合格祝いに買ってもらった自転車もお揃い、大好きなミュージシャンも同じリンド・リンディ。川沿いの街でずっと同じ風景を見ていくはずだった。だけど―。傷ついて、裏切って、追い詰められて…。大人には見えない、少女たちの孤独な魂にそっと寄り添う物語。(紀伊國屋書店より)

すごく好きな作品のひとつ。女子高生たちの間で起こる日常的ないじめを繊細かつリアルに描いた青春小説です。幼馴染の海がいじめを受けて転校を余儀なくされるような状況で、有夢や瑤子が「どちら側か?」を迫られ、加害者側に加担してしまうやるせなさが丁寧に描かれています。題材として苦しいは苦しいのですが、好きなアーティストを通して3人の心が結び付き合う様子や、「ペルーに行く」という象徴的な言葉で繋がりあう様子は、単なる「いじめの苦しみ」みたいな側面ばかりでなく救いを感じさせます。

感情移入できる度:★★★★☆
読了後の満足度:★★★★☆
また読み返したい度:★★★★☆

うに
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気になる小説はありましたか?よろしければ読んでみてくださいね♪

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最後までお読みいただき、ありがとうございました♪

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